「ROMAFESTに恋して U」         徳 元 裕 子  

 

Gernyeszegの小さな公民館は人々でごった返していた。
集まったのはトランシルバニアのあちこちに暮らすジプシーたち。
男も女も、老いも若きも、子供も赤ん坊も、みんなジプシー。
今日はジプシーたちの祭典だ。
村代表の腕自慢の音楽家たちの演奏にあわせて、
この日のために一張羅を着込んだ
踊り手たちが次々に舞台に上り、その技を繰り出す。
独特の哀愁を含んだ、それでいて気持ちを掻き立てるテンポの速いメロディーが、
幾通りも、そして何時間も演奏される中、男は複雑なステップを踏みながら、
力強くその手で体のあちこちをリズミカルに叩く。
女は細かくステップを刻み、全身にその振動を湛えながら、
色あざやかなスカートを妖艶にひるがえす。
音楽にあわせて刻まれる正確なリズムとスピードはまさに神技だ。
この熱演に沸き立ち大声援を送る観客、彼らもジプシー。
音楽があれば自然に体が動き出す。
会場全体が一気に高揚する。

1999年11月に始まったROMAFEST。
 

私は幸運にも、その記念すべき第一回に立ち会うことができました。
初めて目の当たりにする沢山のジプシーたちと、
その魂の咆哮とも思える熱気のこもったパフォーマンスに
最初から圧倒されっぱなしでしたが、その驚きと衝撃は、
彼らの心の歌、JELEM JELEMで幕を閉じるフェスティバルの最後には、
大きな感動の波となって押し寄せて来ました。
その高度なテクニックに驚嘆するのはさることながら、
なぜ彼らのパフォーマンスは見ている者の心をここまで打つのでしょう。
それはジプシーの踊りや音楽が先祖代々、
生まれた赤ん坊が自然に言葉を覚えるのと同じ原理で
彼らの魂に宿ったもう一つ言葉だからです。
ROMAFESTというジプシーの魂の競宴で
彼らが放った輝きを私は忘れることができません。
 

「ROMAFESTに恋して T」
「ROMAFESTに恋して V」

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